ダンスの試合に出るかどうか
迷っていた。
試合に出るためには子作りを中断しなければならないからだ。
悩んだ末に、私は結局ジョンに相談した。
「ダンスの試合に出ようとかと思うんだけど、突然子供ができたら出られないから、迷っている」
ジョンはあっさりと、「じゃあ子供ができるようなことをしなければいいね」と試合に出ることを応援してくれた。
私は、子作りを中断して趣味を優先することに少しの罪悪感を持っていたのだが、ジョンがそれを払拭してくれた。
迷っていた私の背中をポンと押してくれたのだ。
私は、9月の終わりまで子作りを中断して、ダンスの試合に出ることにした。
*
8月の半ばまでに試合の申し込みをしなければならなかった。
パートナーのタニさんは、ギリギリまで私の返事を待ってくれるということだった。私が試合に出ると決めるのなら、それに合わせると言ってくれた。
8月のはじめに試合に出ることを決めてダンスの先生に相談したが、ひとつ問題が起きてしまった。
実は昨年選手登録を抹消してしまったのだ。
再登録までに少し時間がかかるという。試合の申し込みまでに選手登録がされていなければ、試合には出られない。
登録がなくても出られる試合もあるが、それでは私達が目指していた級を取ることができない。
「一度しか試合にでないのなら、登録をしなくてもいいのでは?」
登録をするにはお金がかかる。11月にも試合があり、それに出られるのなら登録は無駄にはならないが、9月だけなら、登録しないで試合に出る方を先生にも勧められた。
正直、私にとってはその方が気が楽だ。
11月の試合に必ず出ると私には言えない。9月までなら頑張って避妊をするが11月までとなるとちょっと厳しい。休みが確実に取れるかどうかも分からない。そこでまた迷ってしまった。
しかしタニさんは「せっかく練習しているのだから級をとるために頑張りたい」という。
「11月のことは、また考えるとして、今回だけでも登録をしよう」
彼がこんなにはっきりと意思表示をしたことは今までない。
試合も「片桐さんにまかせる」「べつに出てもいいけど」そんな態度を取っていた彼である。
しかし、せっかく順調に昇級してきたのだから、頑張りたいということなのだろう。
「じゃあ、選手登録をしよう」
私は、タニさんの勢いに押される形でそう言った。
私達は選手登録と試合の申し込み用紙に記入して提出した。
「申請中と書いて」と先生に言われた。どうにか選手登録は間に合うだろうということだった。
試合まであと1ヶ月弱、練習に励むことになる。